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書 籍 案 内

政治小説の形成
 
――始まりの近代とその表現思想

西田谷洋
(にしたや・ひろし)=著

定価3150円(本体3000円)
2010年11月11日発行
ISBN978-4-902163-57-5
A5判/上製 287頁
      
日本近代文学の出立

政治小説は文学場の力学が抑圧した近代小説の失われた諸相を具現するジャンルであり、その研究は現代の読者の小説観を修正し、文学への態度変更を迫ることになる――

19世紀末に現れた、政治的な言説・含意を持つ多種多様な散文の物語から、政治小説の発生と編成過程を精緻に読み解き、レトリックと思想との抗争の劇としての政治小説を捉える分析への試み。
      
目次

 序

   Ⅰ 政治的物語と隣接ジャンル

 1 啓蒙思想と自由民権運動
   1 啓蒙思想
   2 『西洋事情』の民権思想と解釈
   3 『自由之理』の受容
 2 実録の政治性
   1 民衆運動の実録
   2 『佐賀電信録』における現実の構成と政治性
   3 『西南鎮静録』における政治性のゆらぎ
   4 『梅雨日記』における〈空白〉としての政治
   5 真土村事件の実録における政治性
   6 『蓆籏群馬嘶』における反転する反民権
   7 『燧山黄金一色里』の政府非依存の語り
 3 戯作の民権化
   1 はじめに
   2 啓蒙的小説観と『かたわ娘』
   3 『蛸入道魚説教』と政治小説の思想
   4 「痴放漢会議傍聴録」と政治小説の嚆矢
 4 民権詩歌
   1 民権詩歌の構造
   2 詩的言語の理論における俗語の位相
   3 替歌における俗語の効力
   4 詩的言語としての散文
   5 詩的言語における漢文脈
 5 民権戯曲
   1 自由民権の演劇・戯曲
   2 『民権鏡加助の面影』の構造
 6 フランス革命史論
   1 『政理叢談』における「史論」と「文学」
   2 「西海血汐の灘」における革命像
   3 寓言としての「自由の恢復」
   4 〈仏蘭西大革命史〉という再・語り
 7 自己表象
   1 民権家の自己表象
   2 自己表象のジャンル
   3 自伝の様式と人称
   4 自伝契約と解釈戦略
   5 自己同一性の物語的構成
   6 書評という自伝加工

   Ⅱ 政治小説の語りとジャンル編成

 1 政治小説の思想と表現
 2 政治の隠喩/隠喩による政治
   1 はじめに
   2 比喩と世界観
   3 写像関係と語り手
   4 アナロジー・直喩・プロトタイプ
   5 概念隠喩と一貫性
   6 民選議院論争のモラルシステム
 3 政治小説の中の読書
   1 夢柳小説における政治の伝達
   2 『鬼啾啾』から〈虚無党事情〉の冊子へ
   3 『芒の一と叢』における読書
   4 夢柳小説における読書
 4 人情本的政治小説と読本的政治小説の間
   1 テクストの断絶
   2 語りの特徴
   3 読本性と人情本性
   4 民権思想
 5 偽党撲滅運動と政治小説
   1 偽党撲滅運動のレトリックと政治小説
   2 「今浄海六波羅譚」の生成
   3 「今浄海六波羅譚」の政治性
   4 「今浄海六波羅譚」の再編成
 6 言説空間の中の『佳人之奇遇』
   1 はじめに
   2 漢文体の語り
   3 通俗版との比較
   4 国権小説の思想
   5 政治小説の批評空間
   6 おわりに
 7 〈政治小説〉の成立
   1 はじめに
   2 術語「政治小説」の登場とカテゴリー化
   3 〈政治小説〉としての『雪中梅』
   4 〈政治小説〉の類型
   5 おわりに
 8 引用される〈政治小説〉
   1〈政治小説〉と『雪中梅』偽版事件
   2 『雪中梅・上』の物語作法
   3 政憲の政治小説の構造と思想
   4 おわりに

 註
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 あとがき
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